コラム

信州地粉を使った「蒸しぱん屋・粉花(このはな)」~代表・一ノ木佳子さん~

長野県の東部に位置し、北に雄大な浅間山、南西部に千曲川が流れる自然豊かな町・小諸市で、蒸しパンと焼き菓子のお店「蒸しぱん屋・粉花(このはな)」を営む一ノ木佳子(いちのきよしこ)さんにお話を伺いました。

「蒸しぱん屋・粉花」は、小諸駅から徒歩3分のところにある小さなお店。1階は蒸しパンと焼き菓子の販売スペース、2階は厨房、3階は営業日限定、お一人様推奨のゆったりとしたカフェスペースになっています。お店を代表する蒸しパンは、信州の地粉と地域で採れる果物や野菜をふんだんに使い、風味豊かな味わいはもちろんのこと、彩りの美しさは見るものを楽しませてくれます。店名の「粉花(このはな)」には、「お粉で花を咲かせます」という一ノ木さんの思いが込められています。

彩り豊かな蒸しパン

「粉花」オーナーである一ノ木ご夫妻は、もともと三重の海の近くで、パンカフェを営んでいました。もともとは木や森が好きだったお二人。漠然と森の中で暮らしたいなぁと考えていたところ、小諸の森の中に別荘を見つけ、思い切って移住をすることに。そして移住後、地元のコーヒー店に勤めた佳子さんが勧めを受けたのが、長野県産100%の小麦粉、信州地粉でした。長野県には古くから米と麦の二毛作が行われている地域もあり、おやきや薄焼きなど独自の粉もん文化が根付き、実は家庭での小麦粉の消費量は全国トップレベルなのです。移住してからは地粉を使ったおやきを毎日のように食べていたという佳子さん。『早速、美味しいと勧めを受けた地粉を使ってパンを焼いてみましたが、今までのような味わいのパンは焼けませんでした。そこで試してみたのが、蒸しパンです。ふわっとしているのに、口にするともちもちとした優しい口当たりとずっしりとした食べ応えを感じるものに仕上がりました。』

そして、2018年小諸・懐古園に併設する小さな遊園地(小さな昭和な佇まいの遊園地です)にて週末だけの蒸しパン屋を開くことになりました。手づかみで気軽に食べることができる蒸しパンは、小さな子どもたちを連れたご家族に大好評。しかし、2020年新型コロナウイルスの影響で遊園地は休業したため、蒸しパン販売の道は閉ざされました。
その後、市内の空きスペースで期間限定のポップアップショップとして販売を再開する中、出会ったのが今の店舗です。長く使われていなかったこともありボロボロな状態でしたが、駅近の好立地、販売、製造のスペースに加えカフェとして使える空間もあり、一気にお店を構えるという気持ちが高まっていったそうです。『遊園地では蒸しパンのみの販売という制約がありました。そのことは「蒸しぱん屋」として広く認知されることに繋がり、私達にとってミラクルのようなことだったのですが、お店を構えることで、以前から作っていた焼き菓子も提供することができ、そしてカフェも再び開くことができるなと期待が膨らみました。』

2020年11月「アトリエ粉花」をオープンし、蒸しパン、そして焼き菓子の販売をスタートさせました。今では店舗での営業に限らず、出張販売やマルシェへの出店など町の活性化にも尽力しています。

お店の入り口 大きな窓があり開放感があります
地域のマルシェに出店した時の様子

お店の代名詞とも言える蒸しパン、そして焼き菓子へのこだわりを伺うと、「長野県産100%の小麦粉を使い、他の材料も出来るだけ安心安全なもの」という観点からてんさい糖や有機豆乳などを採用しているとのこと。『豊富な味のバリエーションを生み出す果物や野菜は、季節毎に地元の農家さんや知人の方から直接仕入れることが多く、例えばブルーベリーは浅間山麓で、農薬を使わず自然に近い状態で栽培している知人から分けてもらっています。』小諸は町全体が、浅間山の麓、標高600~1200mに位置し、寒暖差があり雨の少ない気候を活かして、りんごはもちろんブルーベリー、桃、プルーンなど沢山の果物が生産されています。季節に合わせ、旬の農産物を取り入れた蒸しパンを愉しめるのは、小諸にあるお店だからこそかもしれません。

季節毎に様々な素材との組み合わせから生まれる蒸しパン

最後にお客様へのメッセージを伺いました。
『私が長野に来てとても美味しいと感銘をうけた信州の地粉を、おやきやうどんとは違う形で味わっていただけたらと思っています。通常の小麦粉では軽い食感となる蒸しパンも、信州の地粉で作るともちもち、ずっしりとした重量感が生まれます。口当たりをふわっと、重くなり過ぎず喉ごしが良いように、そして色々な素材の味わいを楽しんでいただけるよう工夫を凝らしています。小さなお子様から高齢の方まで、手軽に召し上がってもらえたら嬉しいです。』

ii7GETで販売させていただくのは、「季節の蒸しぱんとフランスの焼き菓子・ファーブルトンの詰合せ」です(2023年3月現在)。目の前にパッと花が広がるような目でも愉しめる蒸しパンと、奥深い味わいを持つファーブルトンをどうぞお愉しみください。

フランスの焼き菓子「ファーブルトン」

そして、高原の城下町・小諸を訪れた際には、「アトリエ粉花」へどうぞ足をお運びください。オーナーの一ノ木さんの好きが詰まった空間は、訪れる人を幸せな気持ちにしてくれます。

一ノ木さんの「好き」がたくさん詰まった店内

文:安東千尋

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