黒澤酒造 ~社長 黒澤孝夫さん,杜氏 黒澤洋平さん~
八ヶ岳の雄大な裾野に吸い込まれそうな郷、佐久穂町八千穂地区にある黒澤酒造。安政5年(1858年)の創業以来、地域に根ざした清酒造りを行っており、現在、酒造業の商いは6代目の黒澤孝夫さんが、杜氏は同じく6代目の黒澤洋平さんが担っています。
日本の醸造所の中でも屈指の高標高地で、厳しくも恵まれた自然の中、冷涼な気候・澄んだ空気・自家製井戸の良質な千曲川伏流水を活かし、厳選された長野県産米を使用して、地域に根差した酒造りをされています。
黒澤酒造では昔ながらの「生酛(きもと)造り」という製法にこだわっています。現在7割ほどのお酒が生酛づくり。空気中に存在する天然の乳酸菌が作った乳酸で雑菌や野生酵母などを死滅させ、その中でアルコール発酵に必要な清酒酵母を純粋培養するという「生酛造り」は、通常の倍ほどの手間と時間がかかる大変な作業ですが、「甘・酸・辛・苦・渋」の五味の絶妙なバランスの酒造りには欠かせない製法なのです。杜氏の洋平さんによると「天然の乳酸菌といっても、その特徴は蔵によっても異なります。黒澤の乳酸菌はごつくなく、優しい酸が特徴。お酒になったときも酸が綺麗にあらわれる。」とのことです。生酛づくりをされている場所に案内されたとき、ヨーグルトのような芳醇なやさしい乳酸菌の香りに包まれていました。生酛造りは通常の倍の時間がかかるものの、この造り方で生き残った酵母は強く、しっかりとした旨みのある骨太なお酒ができるそうです。
さらに黒澤酒造では田植えから稲刈り、そして仕込みまで体験できるファンクラブ八千穂美醸会を主宰しており、今年で21年目を迎えます。(ii7GETも参加し、オリジナルラベルの純米吟醸酒を販売しております。ぜひご賞味ください!) 。地元のみならず全国から多くのファンが参加されています。
また、熟成に関する取り組みとして、県営ダムの管理用トンネル・スキー場の雪中貯蔵・ワイン中古樽貯蔵などを行っているほか、クラフトジン、スピリッツ、焼酎、梅酒など地場の素材を活かした個性的なアルコール飲料の開発なども行っています。他にも吟醸酒の酒粕を夏まで熟成させて、自社農園にて無農薬で栽培した野菜をじっくりと漬け込んだかす漬けや、清酒用の麹を活かしたこうじ漬けや甘酒もこだわりの逸品です。
現在はコロナ感染対策のため中止しているものの蔵開放イベントでは、ファンの方や地域の方も多く訪れます。学校の社会見学や酒づくりの資料館を運営するなど、酒造りをより多くの人に身近に感じてもらえるよう力を注いでいる黒澤酒造。私の故郷の風景が思い浮かぶような美味しいお酒や漬物。どうぞご賞味ください。