コラム

長野・木曽ヒノキを用いた組子作品を手掛ける【信州組子】 ~代表・片山和人さん~

長野県坂城町にて美しい模様の組子の作品を生みだしている「信州組子」。今回は代表の片山和人さん、マネージャーの永坂さんのお二人にお話を伺いました。

組子の鍋敷き。胡麻をモチーフにした模様

「組子(組子細工)」とは、釘を使わずに木を幾何学的な文様に組み付ける伝統技法のことです。古くから和室の欄間や障子などに多く用いられてきました。もともと建具職人である片山さんが、「信州組子」として組子作品を手掛けるようになるまでの経緯を聞いてみました。

玉手箱に見立てた美しい名刺入れ。自身とお相手の架け橋となるよう思いを込めて作られています。

「自分は建具職人の二代目で、住宅関係の主に建具を作っていました。大手ハウスメーカーの参入などにより、建具を作る仕事も職人も減っているというのが現状で、建具屋としてだけでなく、何かできないかと考えて思いついたのが組子でした。そもそも、建具をやるきっかけは組子だったりもして。長野県は組子の技術のレベルが高く、父の時代は欄間や書院などの和室で組子を取り入れていたので、私にとって組子は身近な存在でした。なので、自分も建具をやるなら組子をやりたいなと思っていて、父をはじめ先輩方の作品を参考にしながら、半分趣味のような形で組子を作り始めました。組子は手間もかかるので、利益を求めるとそれだけではやっていけず、片手間でやりながらも、もっと何かできないかなぁと考えていました。そんなときに現在のマネージャーである永坂さんがデザインや販売のサポートを担当してくださることになり、『信州組子』というブランドが誕生しました。」 デザイナーであった永坂さんがロゴやストアの運営などのサポートを担当することになり、偶然にも「信州組子細工」が伝統工芸品として認定された年と同じ2019年に、『信州組子』はスタートしました。

次に、組子の作品作りについて伺いました。
「欄間などの、商品以外の作品は、ほとんど一点物です。大まかな寸法はありますが、基本的に図面がありません。それは二つ理由があります。一つ目は、正解がないからです。図面が先にあると、図面に合わせなければならず、融通が利かないのです。木材を均等に削っても、その時の気候や切れ味などで、コンマミリ単位のわずかなズレが出てきます。その時の状況を見て、臨機応変により良い状態に仕上げられるよう、100%の力を注いでいます。二つ目は、図面を先に出してしまうと、作品を見たときのお客さんの感動が半減してしまうからです。初めて納品したその瞬間に感動してもらいたいという想いもあります。
どの職人さんもそうですが、【段取り八分】とありますが、まさにその通りだなと思います。日本人は、苦労を見せない美学がありますが、見えない部分での作業で決まると言っても過言ではありません。」

「一番は、好きでやっている」ということが作品作りで一番大切なことです。

「やはり、お客様に喜んでもらえたり、「すごい!」と驚いていただいたりするときにやりがいを感じます。以前、とあるご家庭で奥様から依頼があり、旦那様は興味がないのかなと思っていたのですが、出来上がった桜の作品を見て、ご主人の方が周りの人にうれしそうに話していたと聞いたとき、うれしかったですね。」

マネージャーの永坂さんに、片山さんの作品作りについて伺ってみました。
「いつも実際に作っているところを見るとすごいなぁと度肝を抜かれます。毎回驚きがあるので、商品を届けるだけではもったいない、商品の価値を納得して購入していただけるように、制作の過程も動画などで発信していきたいと思っています。もちろん好きな方には伝わっているんだろうなぁとは思うのですが、ただ『高い』でスルーされてしまうのはもったいないので、片山さんの作品作りへの想いも伝えたいと思います。」

組子は「麻の葉模様」を基本に、応用して角度を変えていくと他の模様が出来るそうです。

最後にお客様へのメッセージを伺いました。
「一代と言わず、二代、三代と使えるようなものを作っています。長野の木曽ヒノキを使っているのでオール信州産の『信州組子』の作品をぜひ手に取ってみてください。大量生産・大量消費から、よい物を長く使う、日本の本来のものの使い方を提案していけたらとも思います。」

名刺入れの作業工程です。職人の技をご覧ください。

文:松本菜穂

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