コラム

信州伝統工芸 上田紬【小岩井紬工房】~小岩井良馬さん~

国道18号線から少し中ほどに入ったところに位置する上田紬を製作する小岩井紬工房を訪ねました。小岩井紬工房は江戸時代より蚕種製造業を営み、昭和23年に上田紬の織元として創業、現在は伝統工芸士の認定をもつ姉弟が工房を引き継いでいます。

上田紬は大島紬、結城紬と並ぶ日本三大紬の一つで軽くて丈夫、シンプルで使いやすいデザインであることから江戸時代に人気を博し、有名な人形浄瑠璃作家である井原西鶴の「日本永代蔵」にも、上田紬の名が登場するほど知名度を誇りました。また軽くて丈夫なことから別名、三裏紬とも呼ばれており、3回裏地を変えても破れないという意味だそうです。戦国武将として名高い真田幸村のように丈夫で強いともいわれてきました。上田紬は目の細かい糸使いでしっかりと織り込む技法が、丈夫に仕上がる理由の一つ。また農家が養蚕をしながら、自家用着物として利用していたという歴史もあり、作業にも耐える丈夫さを兼ね備えています。

様々な柄の反物が並ぶ工房。どれも一点物。

上田紬のもう1つの特徴は縞・格子柄ですが、伝統的な技法は受け継ぎつつも、工房によって反物の柄や色合いにも違いがあります。最近では柔らかい色調が人気だそうです。上田紬は染色、整経(織の準備工程で、縦糸の必要な本数・長さ・張力などをそろえること) 、織りという一連の工程すべてを自社工房の職人が行うことも大きな特徴です。

上田の戦国武将、真田の赤備え色に染められた糸

上田紬を作る工房は戦後のピーク時に40件ほどあったそうですが現在は4件のみ。その中で小岩井紬工房は「手織りに徹する」ことを信念に多くの工房が力織機に移行する中、あえて手織りにこだわり、昔ながらの製法にこだわっています

姉弟ともに海外在住経験を持ち、外から客観的に見ることで日本文化の魅力や大切さに気付き、紬の仕事を受け継ぐ決心をしたという経歴をもちます。良馬さんも家業を継ぐためにゼロから学び直したそう。「もともと作ることが好きでした。ゼロからデザインを考えて、色を染めて、全工程をできることに魅力を感じました。でも売れるような作品になるまでは3年くらいかかりました。染めるのと織るのを融合するのが難しいですね。思い描いたデザインになることはまだ難しいです。」とおっしゃる良馬さん。

可愛い色使いの格子柄。縦糸と横糸で作り出される模様は多種に及ぶ。

良馬さんは地元、上田の特色を生かした、上田産のりんごの樹皮で染めたリンゴ染めや上田城の桜の木の樹皮を用いて染めた千本桜染めなど新たな取り組みもされています。また上田紬に興味を持ってもらいたいと花瓶敷織り体験やストール織り体験などのワークショップを開催しています。最近ではハンドメイドに興味を持っている人が多いのでどちらも人気が高く予約がすぐ埋まってしまうほど。また自分の着物をデザインから製作までおこなうという着物LABOも開催されています。

「最近では着物を楽しむ方も増えてはいるものの、まだまだ呉服屋さんは敷居が高いですよね。リサイクル着物業界はのびていますが、我々のような工房は横ばいです。ただハンドメイドに興味のある方も増えてきているのでワークショップを通し、工程を体験してもらうことで、大変さや難しさを理解していただき、価値をわかってもらえるのではないかと考えています。」

年代を感じる織り機や昔の工程が見られる写真が展示されている工房内

工房の中を見学させていただきました。織り機は大きいものは全長が3mくらいあるものもあり、また代々培われてきた技術を垣間見る道具や織機がおかれ、手仕事が行われる場の独特の雰囲気を感じました。私も機織りを体験したことがあるのですが、横糸を通す作業はなんとかこなせるのですが、縦糸を張れるようになるには長年の修行と技術が必要です。さらにデザインまで考えるとなるとその工程の複雑さに驚かされます。技術と経験に裏打ちされた感性の表現から生まれる、手織りの世界はまさに職人技。美しさには理由がある、という事を改めて感じました。

年代物の柄帳。縞柄だけでも数の多さに驚いてしまう。

最後にお客様にメッセージを頂きました。「手作りのものには手作りのならではのぬくもりがあります。使って見につけていただくことで温もりを感じて日常生活をより豊かにしてもらえると嬉しいです。」

ii7GETでは普段使いにぴったりのストールを取り扱わせていただきます。伝統と技術で織りなされる逸品を是非日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。

                                       文:臼田美穂

関連記事一覧