コラム

台湾原住民織物雑貨【岳鴻工作坊Yue-hung】~廖玉枝さん~

台湾原住民太魯閣族の伝統模様、文化を継承する織物工房
 
私が岳鴻工作坊Yue-hungの作品に出会ったのは、4年ほど前でした。台湾の東部、花蓮へ旅行に行ったとき、観光夜市で岳鴻工作坊Yue-hungさんが出店していたのです。原住民の伝統模様が施されたバッグや小物が可愛くて一目ぼれ。お話を伺うと、どれも手作りだそうです。

もともと廖さんのお母様が立ち上げた岳鴻工作坊Yue-hungは、現在、娘である廖玉枝さん、妹の廖玉鎮さん、廖玉枝さんの娘の詹淑茹さんの3人が製作を担っています。

台湾は小さい島ですが、なんと16もの原住民族がいるそうです(2022年現在)。廖さんは台湾東部の花蓮県北部に住む、太魯閣族の出身です。太魯閣族は現在は約2万2千人余りで、台湾で5番目に多い部族です。台湾原住民の衣装にはそれぞれに特徴的な柄や文様があり、色彩豊かです。

「母には伝統的な方法を教えてもらいました。母が残した布には主に虹の橋やひし形模様があり、タロコ族の特徴が表れています。」と話す廖さん。また「機織りの難しさは立体的な模様を編むこと。一目一目に、祖霊の目が入るような思いでつくっています。その細かい作業は時として、私たちも目を痛めなければならないほど、とても大変なことなんです。」その繊細で緻密な編み目模様には先祖から伝わる模様も多く、意味をもち、精霊が宿っていると考えられているようです。

伝統的な模様や技法を残したいと廖さんの娘、詹淑茹さんは、10年前に花蓮の秀林鎮に移り住み「多様性プロジェクト」で部族の文化を学びました。祖母から受け継いだ伝統的な機織り技術を高めるだけにとどまらず、現代の衣類やバッグ、雑貨などに取り入れることで、織物そのものが広く周知されるようになってきたそうです。

また啓蒙活動も積極的に行っており、若手デザイナーが集まる台北松山文創園区の原住民のブースに出店したり、各種イベントで伝統柄を簡単に学べるワークショップや、地域の高齢者施設や学校への出前授業など積極的におこなっており、徐々にその活動は地域の人々にも認知されるようになったそうです。

最後に日本の皆さんにメッセージを頂きました。「私たちの作品を通して、私たちのルーツである太魯閣族の織物工芸を理解し、原住民の文化に興味をもってもらえればと思います。」

私もペンケースやミニポーチを愛用し、台湾土産として知人にプレゼントしています。台湾ならではの伝統と文化が感じられる手仕事の逸品です。

 文:臼田美穂

関連記事一覧