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【誠 十 製 物 所】~徐 偉 誠 さん~
誠十製物所——百年の伝承なくして、台南に根付いた箱根寄木細工
誠十製物所には、百年続く家族の技の蓄積もなければ、創業者が海を渡って師に弟子入りした修業の物語もない。徐偉誠氏はただ、インターネット上の断片的な情報を頼りに、まる八年かけて手探りで学び続け、箱根発祥の伝統工芸・寄木細工を、築城四百年の古都・台南にゆっくりと根付かせた。

寄木細工に出会う前、徐氏が手がけていたのはアクリル板を使ったモザイクアートだった。工房の片隅には、今も色とりどりのアクリル板が数百枚積まれている。七、八年前、インターネットで箱根寄木細工の職人・本間昇氏の制作動画を目にしたことが、木工創作への興味の始まりだった。当時、台湾では寄木細工の存在すらほとんど知られていなかったが、徐氏はすでに全身全霊でこの世界に飛び込んでいた。「実はモザイクと寄木細工の創作ロジックはよく似ています。どちらも色の異なる幾何学模様を組み合わせて作品を作る。ただ、寄木細工のほうがずっと繊細な工程を要するんです」

寄木細工の真髄は、さまざまな樹種が持つ木そのものの色を活かし、着色を一切せずに図柄を組み上げる点にある。木材を細い棒状や板状に加工し、それらを組み合わせて模様を描き出す——木材の多様性こそが、図柄の精緻さを左右する。

そのためにはまず、木目の方向性を見極め、取捨選択できる目を養う必要がある。そのうえで木材を板状・棒状に加工し、配色と組み立てへと進む。

徐氏はデザインで培った知識を活かし、まずコンピューター上で図柄を試し組みしてから、実際の組み立てに入る。「どの工程も、時間をかけて学べばある程度の水準には到達できます。でも配色だけは、感性が問われる。これが一番難しいんです」

図柄のインスピレーションは、台南の古民家から
日本の寄木細工の図柄は、伝統的な文様を受け継いだものが多く、花手毬、麻の葉、七宝、正卍などがよく知られている。一方、台湾の誠十製物所の図柄は、台南の閩南式建築に見られる花磚(装飾タイル)、古い磁器タイル、窓格子の意匠からインスピレーションを得ることが多い。

「日本の寄木細工があれほど精緻で美しいのは、職人の経験と、確立された組み立て工程の賜物です。工程が安定して初めて、図柄の品質も安定する」。誠十製物所もこれを目標に掲げてきた。創業初期はタイルを象徴する四角形を主なモチーフとしていたが、次第により複雑な花磚模様へと発展。さらに、台湾人がコーヒーや茶を愛飲する生活習慣に寄り添う形で、トレイ類に加え、さまざまな密閉収納缶も自社デザインで展開している。

近年の新作では、寄木細工の「無着色」という不文律をあえて破り、寄木細工と台湾の藍染を組み合わせる試みに挑戦。完成した寄木細工を藍染液に四〜五回浸し、その日の気候や気温に応じて一〜二分ずつ浸け込む。箱根生まれの寄木細工に、台湾ならではの「デニムブルー」の表情が生まれた。

寄木細工の創作に取り組んで八年——最初の四年は研究に没頭し、日本現地への視察も重ねた。ブランド設立後はさらに四年をかけて普及に努め、ようやく台湾の工芸界でこの技術が少しずつ知られるようになった。

寄木細工を広める道のりはまだ長い。しかし、工芸に境界線はない。誠十製物所はこれからも、寄木の技法を台湾の暮らしに溶け込ませ、寄木細工と台湾の生活文化が織りなす美しさを、多くの人に感じてもらえるよう歩み続ける。
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