コラム

「和泉蔵みそ」和泉屋商店 ~阿部博隆さん~

嘉永6年に創業以来160年に渡り、佐久の地で味噌づくりを行ってきた和泉屋商店。今回は、5代目代表の阿部博隆さんに、商品へのこだわりと、味噌づくりに込めた想いを伺ってきました。

佐久市の岩村田商店街の一角にある和泉屋商店。かつて加工場であった蔵の入口には、味噌仕込みに使われていた大きな樽が。「私が子どもの頃は、この樽に、40キロの樽をかついで味噌を運び、2トン近くの味噌を入れていました。中に梯子をかけて、板を敷いて足が沈まないようにするんですよ。」

これだけの量の味噌を手作業で仕込んでいたとは…!

 信州みそ発祥の地とも言われている、佐久市の安養寺近くにある和泉屋商店。佐久平産の大豆を100%使用した「安養寺味噌」 は、鮮やかで辛口を特徴とする信州味噌原点の「色合い」「味」「香り」を再現しています。「現在、国産の大豆を使って味噌を作っているところはほんのわずかになってしまいました。安心安全な素材で味噌を作るために、毎月の仕込みでは、その時の最もよい状態の国産大豆や米を仕入れて加工しています。特に、安養寺味噌に関しては、地元佐久平産の大豆を使用しています。」 また、ここ佐久平は、地下水と湧水が豊富で、浅間山からの硬水と八ヶ岳からの軟水が届き、ミネラル分を多く含んだ水を使うことができ、味噌づくりに適した環境なのだそうです。

信州味噌の原点を再現した、こだわりの「安養寺味噌」

現在では、大型の装置やベルトコンベヤーなどを用いて大豆の煮蒸、麹の仕込み、材料を撹拌してミンチ状にするところまでを一括して行い効率化を図るとともに、長年の知識と経験をもとに職人さんが温度や湿度を調整して麹の発酵状態の管理を行っているそうです。
また、通常、味噌づくりでは、蒸煮した大豆を潰してから塩、麹と混ぜ合わせますが、和泉屋商店は、大豆を蒸煮して塩、麹と混ぜ合わせてから大豆を潰します。これは、大豆のうまみを長く閉じ込めておくために、和泉屋商店が創業当初から続けている独自の工法だそうです。

3つのコンベヤーで麹・大豆・塩が中央に集められます。
熟成室は、専用の桶に詰められた様々な年代の味噌が寝かせられていて、芳醇な香りでいっぱいでした。ビニールで蓋をし、発酵時に出るガスの層を作ることで、発酵の質が良くなるそうです。

「古くて新しい」をテーマに新しい商品を生みだしてきた阿部さん。「食卓に塩と醤油は置いてあるけど、味噌は置かれないですよね。味噌も他の調味料と同じ食卓の脇役にしたくて。それで生まれたのが、『カケルミソ』です。他にも、味噌を使ったスイーツとして、味噌マカロンや味噌ポップも誕生しました。味噌の魅力を若い人たちにも伝えたい、そして色々な世代の方に、気軽に味噌を使ってほしいと思っています。」

味噌をパウダー化し調味料のように食卓に並べてもらえるように開発した「カケルミソ」

「味噌はあくまで嗜好品で、人それぞれこだわりや好みがあると思います。様々な味噌が簡単に手に入るこの時代だからこそ、国産大豆を100%使って安心・安全な味噌、そして創業から160年以上も伝統的な製法を守りながら豊かな水や良い原料が揃うこの地作る味噌をぜひ、全国、世界の皆さんに楽しんでいただけたらと思います。」
伝統を守りながら、新しさを追求し続ける和泉屋商店。ぜひ一度ご賞味ください。

文:松本菜穂

関連記事一覧