コラム

蜜蝋キャンドルを手掛けるkotobukirokets ~代表・園原かおりさん~

植物由来のキャンドルを手掛けるkotobukirokets(コトブキロケッツ)。北アルプスと松本市街が一望できる高台に、その工房兼店舗があります。代表の園原かおりさんにお話を伺いました。

広々とした心地の良い店内に入ると、美しくディスプレイされたキャンドルが並び、その奥には、大きな作業テーブルが置かれ、園原さんがキャンドルを制作していました。キャンドルの販売に限らずワークショップやレッスンも定期的に開催していて、同じ空間で楽しむことができます。

キャンドル制作のきっかけは、子育てと仕事の両立で体調を崩した時に、ふと目に留まったのがのちに園原さんの師匠となる方が主催するキャンドルスクールの案内。すぐに申込み、スクールに通う中で、キャンドルを仕事にしたいと強く感じたそうです。更に独学でキャンドル制作の理解を深め、2021年より地元のマルシェ等でキャンドルの販売やワークショップを開催するなど、Kotobukiroketsとしての活動を開始。そして、ご自宅の離れを自らの手で改装した工房兼店舗を昨年11月にオープンしました。
活動名のKotobukiroketsは、店舗がある地名「寿豊丘」からkotobukiを、roketsにはその地から様々な発信をしていくという思いを込めて名付けたそうです。

今回ii7GETでご紹介するのは蜜蝋を使ったキャンドルです。蜜蝋はミツバチが六角形の巣を作る材料として働き蜂の腹部から分泌される蝋のことで、ミツバチの巣から蜜を採った後に、溶かして固めたもの。保湿性に優れ、ワックスや革製品のメンテナンス剤や化粧品にも使われています。
園原さんが原料として使う蜜蝋は、地元松本の老舗蜂蜜店による長野県産のものです。その蜜蝋から生まれるキャンドルは、炎の色が強く、光も遠くまで届き、一般的な西洋ろうそくに比べるとゆっくりと長く灯すことができ、煤も出にくいのだそうです。優しく甘い香りも心地よく、空間にはちみつとほぼ同じ成分が放たれるとも言われています。実際にキャンドルに火をつけていただくと、ふわっとしたオレンジ色の火が灯り、さらに周りのキャンドルに反射してキャンドル全体が灯っているように感じられました。

小さいながらオレンジの光が強く、優しく灯ります

kotobukiroketsのキャンドルは、すべて手作業で制作しています。すらりとした佇まいがかわいらしいキャンドル「cake」は、その細さを生み出すには繊細な手作業が求められるそうです。また、その名の通りバースデーケーキなどに使っていただくキャンドルですが、20分程度火が灯り、蝋がすぐには垂れないようデザインされています。「誕生日ケーキにろうそくを灯す時って忙しいじゃないですか?電気を消したり、写真を撮ったりしているうちに、蝋が垂れてきてしまう。。。このキャンドルは、火を灯す時間をゆっくり皆さんで楽しんでいただけるように考えて作りました。」と園原さん。他にもキャンドルを楽しんで使ってもらえるよう様々な工夫が施されています。

カラフルな芯もアクセントになる「cake」

蜜蝋キャンドルを使う上でのアドバイスを伺うと、「自然由来のものなので、少しづつ劣化が進みます。色も少しづつ褪せてきますし、劣化によって煤も少し出るようになります。お化粧品と同じように1年を目処にお使いいただきたいです。」

出来たての蜜蝋キャンドルは鮮やかな黄色ですが、少しづつ落ち着いた色合いに変わってきます。

また、園原さんは蜜蝋キャンドルの他にもソイ(大豆)ワックスをベースに、地元松本市のロスフラワーを使ったアップサイクルキャンドルなども制作しています。こだわりは自然由来のワックス(蝋)を使うこと。環境や身体にも優しく、灯すことで空気を浄化するとも言われているそうです。

松本で生産が盛んなラナンキュラス等のロスフラワーを使ったランタン

最後に、園原さんのキャンドル作りに対する思いを伺いました。「キャンドルは、現代の生活の中では絶対に必要なものではない。でも、主役ではないけれど、そっと傍らにあって豊かな時間を生み出してくれるものとして皆様に愉しんでいただきたい。だからこそ、日常に取り入れやすいキャンドルを提案していきたいと考えています。」Kotobukiroketsでは、キャンドル教室やワークショップも頻繁に開催されていて、自身の作品の発表だけではなく、より多くの人に「キャンドルがある生活」を伝えていきたい、愉しんでもらいたいという園原さんの思いを強く感じる時間でした。

文:安東千尋

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