コラム

信州鹿革の革製品 GrooverLeather ~徳永直孝さん~

長野県千曲市にて革製品を製作、販売しているGroover Leather(グルーバーレザー)さん。今回は、代表の徳永直孝さんに、ii7GETにて販売する信州鹿革を使用した製品への想いについて、そして、長野県をはじめ全国でも深刻な問題になりつつある鹿などの獣害問題(※1)へのアクションについて、お話を伺いました。スタッフの住む佐久地域でも、鹿をはじめとする獣害問題はとても深刻です。「動物たちと共生していくためにできること」を自分事として考えるきっかけとなるインタビューとなりました。
(上写真 左:原山純一さん、右:代表 徳永直孝さん)

 元々は家具職人だった徳永さん。趣味のバイクで革製品を身に着けていたことから、自分でも作ってみようと思い、革製品の製作を始めたそうです。次第に製作を委託されるようになり、アメリカンカジュアルの製品を製作・販売する株式会社フラッドヘッドにて革部門のトップとして12年間製作に携わった後、同僚だった原山純一さんと共にGroover Leatherを立ち上げ、現在に至ります。

2021年に千曲市にオープンした工房兼店舗

「革のなめしには、『タンニンなめし』と『クロムなめし』の二種類があり、その一つの『タンニンなめし』は、植物の樹皮や幹、葉、実などに含まれるタンニンを使用しています。また、木の表面を仕上げる作業と革をなめす作業は似ていて、近いものを感じます。」木工職人だった徳永さんだからこそ感じられる革と木の共通点。実際になめす作業もいつか見学してみたいと思いました。

一つ一つ手作業で仕上げています。

次に、徳永さんが、信州鹿革と出会い、製品を製作・販売するまでの経緯を伺いました。
2021年ビジネスフェアに出店していたとき、長野市の地域おこし協力隊の方から「長野市で駆除された鹿の革を使ってみませんか?」と相談されたことが始まりでした。長野市で捕獲された鹿は、食肉としての活用が進む一方で、革は廃棄されてしまうという現状(※2)を徳永さんは知りました。その後、実際に長野市で捕獲され飯田市のタンナー(革製造所)でなめした革に触れて、信州鹿革の質の高さを感じたそうです。

信州鹿革は、特に寒い地域であればあるほど大きく、厚みがあるそうです。二ュージーランド産の放牧鹿の革と異なり、天然の物なので、季節などの条件による違いや個体差があり、小さな傷も含めて、その鹿が生きた証であり、まさに一点物!

そこで、「命」から「革」「製造」そして「販売」「消費者」というような流れに持続性を持たせる為に徳永さん達が始めたのが「信州鹿革エシカルプロジェクト」。「長野市で害獣として駆除された鹿を飯田市で革に変え千曲市で製品にする」という、長野県内で全ての工程が完結する、まさに地産地消で地球にやさしい(エシカル)な活動です。

命が無駄なく循環する仕組みがとても分かりやすく表現されています。
信州ハンドクラフトフェスタ2022にて「信州ハンドクラフト大賞」を受賞した信州鹿革の巾着ショルダーバッグ

「実際に、常連のお客さん様に、手に取ってもらった商品が信州鹿革だと説明すると、「鹿革ってこんなに柔らかいの!?」と驚かれます。革製品というと、牛革を海外から仕入れるというパターンが主流ですが、鹿革の価値を伝えて少しでも廃棄をなくしていきたいです。」

「このプロジェクトは継続していくことが大切なので、販売に関しては使命を感じています。無駄なく命を生かし、人も、農作物も、森林もお互いに持続可能でいられるよう、全体を考えていきたいです。」徳永さん達は、信州鹿革製品の製作・販売だけでなく、ワークショップや講演を行うことも精力的に行っています。ぜひ、長野県内、そして全国でそのような取組みが広がり、自然や動物、そして人が共生していける暮らしをより多くの人が選択できるようになって欲しいと思います。応援しています!!

革から食まで体験できるワークショップ「信州ジビエまるっと体験」にて。この回では、コインケース作りの体験とジビエスパイスカレーを食べることができ、大盛況だったそうです!

最後に、お客様へのメッセージを伺いました。
「私たちの身近にある水や森や山の木、動物などが、日本という国にはたくさんあるということを気付いてほしいです。まずは、『地球に優しい、エシカルって何だろう?』と思ってもらうことが第一歩だと思っています。みんなで一緒になって考えて、解決していけたらいいなと思います。」

 徳永さん達の想いが詰まった信州鹿革の製品たち。ぜひご覧になってください。そして、『地球のために私たちにできる一歩』を一緒に考えていきましょう!

※1 野生鳥獣による農林水産被害の概要
野生鳥獣による農作物被害額は155億円(令和3年度)。全体の約7割がシカ、イノシシ、サルによるもの。 森林の被害面積は全国で年間約5千ha(令和3年度)で、このうちシカによる被害が約7割を占める。鳥獣被害は営農意欲の減退、耕作放棄・離農の増加、さらには森林の下層植生の消失等による土壌流出、 希少植物の食害等の被害ももたらしており、被害額として数字に表れる以上に農山漁村に深刻な影響を及ぼしている。(農林水産省ホームページより)
※2 全国で年間60万頭もの鹿が害獣として駆除されており、その中で食肉のジビエとして活用されるのは約10%に限られ、ジビエレザーに関してはほとんどが活用されずに捨てられている状況です。長野県は鳥獣被害による被害額が第1位ですが、地元の猟師や自治体の活動により年々駆除数が増え、被害額が減少しています。しかしながら個体数が減らないのは鹿の「高い繁殖率」が要因の一つとされています。(信州鹿革エシカルプロジェクトプレスリリースページより)

文:松本菜穂

関連記事一覧