
超完熟にこだわるミニトマト農家 【まつのき農】 ~松木路子さん~
「まずは飲んでみてください。」と差し出されたのは松木さんのミニトマトジュース。よく「どんな味ですか?」と尋ねられますが、説明が難しいんです。だからこそ、そう聞かれたときには「まずは飲んでみてください。」とお伝えしています。可愛らしいミニトマトのイラストが描かれたラベルが付いたそのジュースを飲むと、思わず「もう終わり?」と感じるほど飲みやすい。トマト特有の酸味や香りが少なく、逆に言うと、トマトらしさが強くないのです。市販のトマトジュースとはまったく異なり、トマトジュースや野菜ジュースが苦手な方でも飲めるような優しさとまろやかさが感じられます。飲んだ瞬間、体にスーッと入っていくような、そんな味わいです。実は、松木さん自身、もともと市販のトマトジュースが苦手だったそう。では、なぜそんな松木さんがトマトジュース作りを始めたのでしょうか。それは、いくつかのご縁が重なった結果だと言います。
松木さんは青森県でニンニク農家を営むご両親のもとで育ちましたが、農業だけはやりたくないと考えていたそうです。その後、県外で仕事をしていたものの、ふと仕事に疲れたときに、畑の景色が恋しくなったのだとか。そこで、ご主人と共に農業を学ぶことを決意し、住み込みで研修を受けられる農家を探していたところ、長野県佐久市望月にある有機農家を見つけ、2014年春に長野に移住しました。
最初はズッキーニやお米、豆腐作りを学んでいたものの、ある日、先輩農家が作っていたトマトジュースを飲んだ瞬間、その美味しさに感激。松木さんにとって、もともと苦手だった市販のトマトジュースとは全く違う味わいに衝撃を受けたそうです。そして、「自分も誰かに衝撃を与えるようなものを作りたい」と感じ、トマトジュース作りを志すようになりました。
その頃、偶然にも借りた畑にビニールハウスがあり、前の借主が大玉トマトを育てていたため、設備が整っていたのです。まさに導かれるように、トマトジュースへの道が開かれていったのです。
ミニトマト作りを決意した松木さんは、1年目は見よう見まねで作ってみたものの、あまりうまくいきませんでした。2年目には近所の農家さんからアドバイスを受け、少しずつ形になり自信がついたものの、ジュースにすると思ったほど美味しくはありませんでした。そして、3年目にようやく、ミニトマトを超完熟させて収穫し、そのトマトでジュースを作ってみると、ようやく納得のいく美味しさに仕上がったと言います。
とにかく「超完熟」にこだわる松木さん。現在、700本のミニトマトを一人で育て、毎日一つ一つの実を手で触って完熟を確かめてから収穫しています。そのため、一畝50本ある苗を見て回るだけで半日かかるそうです。それを一人で行っているというから、驚きです。また、農薬は一切使用せず、蓼科有機肥料を使い、さらにトマトの葉や茎を発酵させた土作りにも挑戦しているそうです。
松木さんのトマトジュースは、なんと旧軽井沢の5つ星ホテルのシェフにも認められ、朝食で提供されているそうです。この出会いもまた偶然で、シェフとバイヤーにジュースを飲んでもらったところ、取引が決まったそうです。多くのご縁が重なり、今やミニトマトジュース農家として歩んでいる松木さん。その魅力的な人柄が、きっと周りを引き寄せたのでしょう。
松木さんは、味が完成した今でもトマトジュースの味の研究のため、他の市販のトマトジュースを飲み比べ、研究しているそうです。最後に、お客様へのメッセージを伺いました。「まずは飲んでみてほしい!特にトマトジュースが苦手な方にこそ、ぜひ飲んでいただきたいです。」無添加で農薬未使用の超完熟ミニトマトジュースは、毎日飲んでも飽きのこない美味しさ。まずは、是非飲んでみてください!
文:臼田美穂
