コラム

信州四賀 有機野菜を育てる【たべくら農園 】~古家節子さん~

北アルプスを望む、長野県松本市の北東部の四賀地区(旧四賀村)。二人の男の子を育てながら有機野菜を育てている「たべくら農園」の古家豊和さん・節子さんご夫婦。「もっと食べて暮らそう。」をモットーに、農薬・化学肥料を一切使用しない有機栽培で、年間約50種類の野菜を栽培されています。今回は、奥様の節子さんにお話を伺いました。

松本市四賀地区。北アルプスの稜線が美しいですね。

今年で10周年を迎えるたべくら農園さん。お二人のこれまでの歩みをお聞きしました。「二人とも元々旅や自然が好きで、自然に寄り添って暮らしていきたいと思うようになり、最終的に有機農業にたどり着きました。長野市の農場で研修を受けたのちに、ここ松本市四賀地区で研修先と同じ多品目栽培を始めましたが、初めは手探りで大変でした。モデルはあっても、自分たちの土地や気候で作るのはまたイチからのスタート。最初はちょっとしたことで失敗してしまうこともあり、自分たちを責めてしまうときもありました。また、途中で二度の出産もあり、子育てをしながらの農作業で、120%力を注げないことに焦りをを感じた時期もありました。それでも、やっていくうちに、美味しいものを作っていけるようになり、お客さんもついてきてくださり、ここ数年は安定しています。」新しい土地での就農、そして出産や育児も加わり、とても大変な状況でも歩みを続けられてきたのですね。

美しい風景が広がる畑。

次に、四賀地域での野菜作りについて、詳しく教えていただきました。「四賀地区は、もともと海底だったため粘土質で、畑としてはやりにくい土質です。でも、この粘土質の土と、朝晩涼しく日中暑い一日の寒暖差の大きい気候が、濃厚でぎゅっと旨みの詰まった野菜を育ててくれます。また、厳しい寒さ、空気と水のおいしさは、美味しい野菜作りの必須要素だと思っています。小さい農家だからこそ、手間暇かけて美味しい野菜が作れるのかなと思います。」

お子さんたちも一緒に農作業を手伝う。素敵な光景です。

「たべくら農園では全ての野菜作りにおいて農薬・化学肥料は一切使っていません。 それはシンプルな農業が好きだからです。多種多様な微生物が、人の手ではかなわない絶妙なバランスの豊かな土を育ててくれます。土が健康になれば、野菜も自然に健康に育ちます。堆肥は自家製の「ぼかし肥料」(※)と地元四賀で作られる鶏糞ときのこの菌床などで作った「発酵鶏糞」です。身近な資源を使ったり、小さな工夫を積み重ねることで、自然環境にとっても自分たちにとっても持続可能な農業をしていきたいです。」」

※「ぼかし」とは植物が分解しやすい形に発酵させた肥料のことです。 たべくら自家製ぼかしは、米ヌカとモミガラと、自然のエネルギーたっぷりの土着微生物のみで出来ています。 微生物も遠くから運ばれてきた市販の単一な菌などではなく、この土地に古くからいる、 家の裏山にいる身近な菌(放線菌、糸状菌、納豆菌など多種多様)を培養して使っています。 

「たべくら農園」という農園名はどのようにうまれたのでしょうか。「 私たちが有機農家を始めたのは、『自然に寄り添って生きて、育てた野菜を食べて暮らしたい』という思いからでした。美味しい野菜が食べたい思いが、美味しい野菜作りの第一歩だと考えています。そして、信州の風土を感じて野菜を育てる面白さ、季節の移り変わり、育ち食べられるものが限られる不自由だからこそある豊かさ、畑から繋がった食卓で自然を感じて料理が食べられる楽しさもあります。自然とのつながりを学び、野菜を主役に、台所が楽しく、おいしく食べて暮らしを面白くすることを伝えていきたい、【もっと食べてくらそう】という想いを「たべくら」に込めました。」

たべくら農園の野菜セットには、節子さんが実際に作った、おすすめのレシピがついてきます。「その時期に旬を迎える野菜たちをシンプルかつダイレクトに楽しめるレシピを考えています。」節子さんの一押しは、「モロッコいんげんの素揚げ」。味付けはシンプルに塩のみ。モロッコいんげんの美味しさが引き立ち、食べ応えもあり、お勧めとのことです。お話を伺っているだけでも十分美味しさが想像できますね♪お子さんのお気に入りメニューは、冬野菜のシチューやミニトマト、ブロッコリー、きゅうりだそうです。採れたては一層おいしいのでしょうね!

素材の美味しさがわかる節子さんオリジナルレシピ付き。

「野菜を食べているお客さんから、「子どもが野菜嫌いだったけれど、たべくらさんの野菜は食べてくれました!」「シンプルでもおいしいから、料理上手ではないけれど食事がいつもゴージャスになるんです。」「その時期の旬の野菜をシンプルかつダイレクトに楽しめるレシピづくりを心掛けています。」中には農園を始めた頃から9年以上も野菜を食べ続けてくださっているお客様もいてくださり、とてもありがたく感じています。」

最後に、お客様へのメッセージを伺いました。「もともと野菜を作りたいと思ったのは、野菜を食べて感動したことがあり、『人を感動させられる野菜ってすごい!自分もそうなりたい!』と思ったからでした。その後実際に農業に携わり、自分も人に喜んでもらえる野菜作りができるようになってうれしく思っています。これからも箱空けたときに「ハッ!」とするような野菜を、そして幸せをお客様にお届けしていきたいと思っています。」

古家さんご夫婦の愛情とアイデアがこもった野菜セット。ぜひご賞味ください!

文:松本菜穂

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