コラム

山本屋糀店 ~小宮山利幸さん~

長野県佐久穂町に江戸時代文化の創業より200年続く老舗「山本屋糀店」の小宮山社長にお話を伺いました。
山本屋糀店は米糀・甘酒・味噌・醤油の醸造元として天然醸造と国産原料にこだわり製造されてきました。米麹の原料は100%長野県産にこだわり、米糀の酵素の力も研究機関で調べてもらったところ他社製品よりも強いということがわかったそうです。そのため甘酒は深い味わいと甘さが特徴で、令和元年度第2回長野県甘酒鑑評会では、最高賞の知事賞も受賞。また濃い口醤油「源泉」は醤油品評会で数々の賞も受賞しています。

「当店ではこうじは「麹」ではなく、「糀」の文字をずっと使ってきました。原料のお米を大事にしてきたからです。甘酒、味噌、醤油造りの基礎となる米糀の製造は非常に繊細な作業です。糀の持つ力を最大限に引き出すために、刻々と変わる糀の声に耳を傾けて、温度や湿度、そして長年の経験から変化を感じとり、手間をかけることで良いものができます。手をかけた分、糀はそれに応えてくれます。」と話す社長。糀への思いが伝わってきます。実は我が家も山本屋糀店の糀を使い甘酒や味噌を仕込んでいます。特におすすめなのは社長から教わった濃い甘酒つくり。それをもとに塩麴や醤油麹などにアレンジします。この方法だと失敗がなく手軽に美味しく麹調味料をつくることができ、生活に取り入れやすい。我が家では常備の調味料になりました。糀のパッケージに甘酒の作り方が印字されているのも嬉しいですね。

また、このこだわりの糀を使った味噌もやはり美味しい。色々な旅先などで多くの味噌を購入してきたのですが、私にとってやはり一番おいしいのはこちらの味噌なのです。毎日飲んでも飽きがこない、そして何よりも身体にしみこむような美味しさ。原料の大豆や塩、糀のみならず、その土地の水、空気や天候などによっても味が多様になるのが味噌の不思議ですね。

麹は日本の伝統発酵食品に欠かすことができないだけでなく、日本人のものの見方や考え方、生活や社会にまで影響を与えてきたと話す社長。また2005年には麹菌のゲノム解析が完了し、人の遺伝子の約半分の1万2千個もあり、微生物の中で最上位の数を持つ菌であることがわかったそうです。2006年には「二ホンコウジカビ」が国菌として日本醸造学会にて認定。(このカビは日本でしか育たないカビだそうです)2013年では和食がユネスコ無形文化遺産に登録され和食の良さが再認識されています。また驚くことに栄養成分として麹菌のだす酵素は100種類以上もありお米にない成分を400も生み出しているとのことでした。麹についての専門的な知識もお聞きし、改めて学術的にもすごいことを再認識させていただきました。

「小さな店ですが、お客様に日本の伝統的な本物の味を味わっていただき、健康と喜び、活力を持っていただくために努力しております。」と語る小宮山社長。糀への並々ならぬ思いを感じました。

 

関連記事一覧