コラム

だいちゃんのお米~吉原大輝さん~

私が吉原大輝さんに出会ったのはZAWAZAWA プロジェクト主催、佐久の地産地消イベント「おむすび&お味噌汁の会」の企画会議でした。第一印象は朴訥な青年。でもどこか宮沢賢治のような哲学を持っていそうというイメージでした。会議ではあまりお話しする時間ももてず、イベントで使用するためのお米を頂き家で炊いてみると、その違いに驚愕。もち米と間違えているのではないかと思われるくらいもちもちで味が濃いのです。そして何よりも冷えても美味しい。まさにおむすび向きのお米でした。

イベントでは土鍋でご飯を炊きおひつに移すと、ご飯が光輝き一粒一粒がしっかりとしています。シンプルに塩おむすびで食べていただいたのですが、大人も子供もみんな美味しそうにほおばって笑顔。やはりおいしいものは皆を幸せにしてくれます。

大ちゃんのお米の魅力を知るべく取材を申し込んだところ、稲刈りでもしながらということだったので、稲刈りシーズン真っただ中、きっとお忙しいのだろう。少しでも力になればと思い本気モードで稲刈りをお手伝いに伺いました。しかし着くなり、「まずは動物たちでもみますか?」と吉原さん。ひなから育てたという立派なニワトリとヤギの場所に案内されました。優しく動物たちをなでる姿に動物たちがいかに大事にされているかがすぐわかりました。皆吉原さんに集まってくるのです。なんだかとても温かくててゆっくりとした時間が流れてなんとも平和な風景です。

一通り動物をめでた後「まあぼちぼち稲刈りしますか。」と田んぼへ移動。今年から6反に増えたという田んぼは夫婦2人でやるにはかなり広い。しかも吉原さんのお米は農薬・化学肥料を一切つかわず、はぜ掛け天日干しにこだわり、手間暇かけて育てています。でも吉原さんも奥様の樹里さんも、あくせくするでもなく、淡々と作業をすすめていきます。コンバインなど大型機械で生産性や効率性を高める農家が多い中、なぜあえて手間暇かけた稲作りをするのか。吉原さんは「除草剤を使って,化成肥料をまけば簡単にできるのだが、それでやっても面白いと思えなかった。時代に逆行しているが、あえて小規模で無農薬でやるということのほうがやりがいが持てる。効率はかなりおちるけれど、生き方のココロの豊かさを感じた。あえて手間暇かけるそのゆとりが人生の豊かさ、それこそが生きるということなのでは。」と。このゆとり、心の豊かさこそが吉原さんの農業の醍醐味なのかもしれませんね。

吉原さんは学生時代、環境問題や社会問題に関心が高く、答えの出ない問題に悩み一時は人間不信にもなったそうです。しかし農業をしていく中で自分の力量を知り肩の力が抜け、自分を愛せるようになったそうです。全ての人が自分を幸せにすればみんなが幸せになるそういう世の中になってほしいと。そこには吉原さんの農業哲学というか人間愛を感じました。
どのような方に吉原さんのお米を食べてほしいかお聞きすると「幸せになりたい人。」と。「うちのお米は一般的なお米からしたら高いです。ですから高いお金をだして買っていただけるのであれば、美味しいから買うのもいいけれど、味だけでなく幸せになってほしい。食べるものを選ぶという行為、自分が何を食べるかというのはどういう世界になってほしいかということ。自分からお金をだして、農家を応援して、しいては自分が幸せになるという考えを受け入れてくれる人に届いてくれたらうれしい。」と。

吉原さんのお米は「たきたて」という品種。生産されている農家も少なく大変稀少なお米です。低アミロース米の一種でもち米とうるち米の良いとこどりのようなお米。おむすびやお弁当、またおはぎや炊き込みご飯に使うと美味しさを実感していただけると思います。

お米の美味しさはもちろん、吉原夫妻の人柄そして農業からつながる人生哲学にも魅力を感じました。

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